離婚問題についてコラムの2回目です。
【質問】
夫の浮気がありました。夫と離婚をして,夫とその不倫相手の両方から,慰謝料をとりたいと思いますが,できるでしょうか?
【回答】
- 夫からの慰謝料
離婚に伴う慰謝料ということになりますから,浮気が離婚の主な原因かどうかにもかかわってきます。たとえば,実は,夫の浮気は5年前に発覚したものの,そのときには離婚までには至らず,見た目上,修復したような感じになっていたが,お金のことや暴言など他のこともつみ重なり,「やっぱり離婚しよう」ということになった,というような事案では,浮気だけが離婚の決定的な原因とまではいえない場合があります。もちろん,他の離婚原因も全部あわせて,どれだけ精神的苦痛を受けたかが慰謝料という形であらわれるものですから,そうした意味の慰謝料は,額はともかくとして,発生しているといえます。 - 不倫相手からの慰謝料
不倫相手がなぜ慰謝料を払わなければならないかというと,それは,円満な婚姻関係を壊したからです。なので,不倫相手との浮気が離婚原因とならない場合は,不倫相手への慰謝料請求権は発生しません。逆に言えば,「浮気さえなければ離婚までにはならなかった」,という事情があり,そうなることを承知の上でお付き合いを続けていたとすれば,その相手は慰謝料を支払う義務が生じます。 - 両方からダブルでとれるか?
では,もし,浮気が原因で離婚することになったことが明らかな場合,夫からと不倫相手からと両方から慰謝料をダブルでとることができるのでしょうか?
法律では,この場合,共同不法行為責任となり,不真正連帯債務関係になると言われています。簡単にいうと,「一緒に悪いことをしたのだから,連帯責任だ」ということです。
たとえば,AさんとBさんが二人で,1万円する花瓶を割って壊したとしましょう。その責任はAさんにもBさんにもありますし,花瓶の持ち主はどちらに対しても被害額の全額すなわち1万円を請求できることになります。でも,もしAさんから1万円を全額支払ってもらったら,ダブルでBさんにも1万円支払ってもらうことはできません。なぜなら,そうしたら2万円もらうことになってしまい,1万円の被害しかないのに,もらいすぎだからです。
夫と不倫相手の慰謝料も同じ関係になります。なので,理論上はダブルで請求はできないことになります。ただし,花瓶と違って,慰謝料というのは,心の傷を慰謝する,慰める料金ですから,心の傷の値段など,もともとつけられず,被害金額がはっきりしていません。なので,ダブル,すなわち二重払いとなるかどうかも,具体的な状況によって,微妙な判断になります。
たとえば,夫から200万円の慰謝料を支払う約束をとりつけた場合,実際に払ってもらった場合などでも,それで不倫相手から一切とれないかどうかは,状況によりわからないということです。ただ,夫からの慰謝料の金額,それを現実に受け取っているかどうかは,もし不倫相手への慰謝料が裁判になったときに,裁判官が考慮する一要素にはなり得るということです。
そうしたことも念頭において,それぞれのタイミングや方法を検討しましょう。